民主党建て直しの意見書(私案)発表

   私は、民主党筆頭副代表に復帰後、31日に行われた党常任幹事会において、「民主党の建て直しに関する意見書」の私案を提言致しました。
 その内容は、Ⅰ.政党所属議員としての自覚、Ⅱ.なぜ不人気なのか、(1) 民主党の組織原理、(2) マニフェストと基本政策、(3) 日本の政治制度のしばり、Ⅲ.どのように党を建て直すか等、私なりの考えをまとめたもので、 自民党から政治家の経歴をスタートさせ、自民党離党後は新民主党結党に参画、現在もそのまま籍を置き、長年の政治生活を通じて幾つもの政党を見てきた私だけに、現在の民主党という政党が本来もつべき姿について発言する多少の資格があるように思い、以下は、その視点からの民主党の建て直しに関する意見書の全文であります。

Ⅰ.政党所属議員としての自覚
 政権獲得後に限っても、既に少なからぬ数の国会議員が離党した。離党にはそれぞれの理由があるだろうが、一般論としていえば、現職議員の離党は何よりも、有権者に対する裏切りである。衆議院、参議院にかかわらず、現在の議席は民主党の候補として得たものである。本人は、自分の実力で得たと思っているかもしれないが、民主党のブランド、組織的支援態勢、資金、宣伝活動、そして何より有権者の民主党に対する期待によって得られた。更にその背後には、長年にわたり党を自民党に対抗する勢力に育て、国民の期待を膨らませてきた民主党関係者の努力がある。離党は、それらの同志と、有権者への裏切りである。
 私は1993年自民党を離党したが、それは冷戦の終結と右肩上がりの経済の終焉という大きな歴史の曲がり角で、五年にわたる政治改革論議の果ての離党だった。戦後の自民党一党支配のみを許す中選挙区制度を改革し、政権交代可能な二大政党制の新しい政治体制を作るという固い決意と覚悟の下での集団離党だった。我々の決断に対して、国民の熱い期待が盛り上がるのをひしひしと感じた。そしてその後の総選挙では離党グループは大幅に議席を増やし、38年ぶりの非自民党政権を樹立し、その後につながる日本政治の大きな構造転換をなし遂げた。
 そのときに比べると、今回の離党劇は、歴史の必然や国民の期待に応えるというより、民主党の不人気ぶりから逃げ出しているように思われる。政治家としての国家観が感じられないのは残念だ。日頃はスポットライトを浴びることのない議員も、離党届をもって幹事長室に行けば、大勢のカメラマンたちが待ち構えていて、届け出後には自分が主役の記者会見が待ち構えている。そして選挙区で「消費税反対」、「原発反対」を叫べば、よくやってくれたと称賛の声も寄せられる。不人気な民主党に残るより、余程良い選挙運動になるだろう。しかし、それだけのことである。程なくマスコミと有権者の関心は去り、選挙で生き残ることは難しい。政党は、選挙を共同で戦い、政権を獲得して自分たちの政策を成し遂げようとする人々の共通財産である。今はいかに不人気とはいえ、民主党はなお長年かけて築き上げてきた同志と支持者の財産であり、それを大切にし、再生させていくことこそが、国民に対する務めであるとともに、政治家としての歩まねばならない道である。

Ⅱ.なぜ不人気なのか
 目下民主党が不人気であることは間違いなく、我々はこの事実から目を背けることはできない。しかし自民党の支持率が伸びていないことも確かであり、ただ民主党政権が期待外れだった分、次回総選挙での自民党への投票予想が相対的に高くなると想定されているだけに過ぎない。マスコミの調査では、既成政党批判の高いとこにも維新の会への支持が高く、国政選挙では大幅に議席を獲得すると予想する向きもある。しかし小選挙区制度の下、全国津々浦々で二大政党が対峙している現状で、大阪、名古屋、首都圏などを除いて、新党が全国的な大きな拡がりが期待出来るだろうか。きちんと経験を踏まえた政策を堂々と訴えていければ、維新の会など恐れるに足りない。我々としては、民主党を甦らせ、自民党一党支配終焉後の安定的な二大政党制の欧米型政治システムを構築する必要性を、国民にしっかり理解してもらうことが重要だ。
 なぜ不人気なのか。不人気だといって逃げ出す人がいるから、益々不人気になるという負のスパイラルに入っているように見える。執行部は、逃げ出すことは、党は勿論、本人にとっても賢明なことではないことを納得させ、この負のスパイラルを止めなければならない。党を離れて次期選挙に勝利するには余程の蓄積がなければ不可能であることは次期総選挙の結果、明らかに証明されることになる。

(1)民主党の組織原理
 民主党の不人気の原因が、期待が高かったのに政権獲得後十分実績をあげることができずにいることにあるのは間違いがない。更に実績があげられない理由として、民主党の組織原理、バラ色に過ぎたマニフェストと、更に日本の政治制度のしばりの三つが考えられる。

 まず民主党の組織原理の問題から取り上げるが、比較のために自民党の組織原理について述べると、派閥、族議員、官僚依存、当選回数主義、年功序列、全会一致主義である。これらは、政権の独占、利益誘導政治、政官財トライアングル、中選挙区制を前提にした組織原理である。更にその背景として、米ソの冷戦構造(国内政治的には保守対革新)と高度経済成長があるのだ。西側自由主義圏に属する保守政党であることが政権の独占を可能にし、高度経済成長が政治を利益誘導的なものにした。更に同士討ちのある中選挙区制が、派閥と族議員を生み出した。

 民主党は、自民党が有していたこれら組織原理の背景をすべて欠いている。というより、自民党政治の背景が失われたが故に、一党支配、利益誘導政治が否定され、政治改革を経て民主党が生まれ成長してきた。これは日本の政党政治の画期的な側面であった。しかし、自民党の組織原理はそのままでは民主党に適用できず、その結果、体質の異なる二大政党が定着しつつあることは事実である。

 しかし自民党型の組織原理に代わる新しい政党のアイデンティティを、民主党はまだ確立できずにいる。のみならず、自民党型政治を否定する余り、それがもっていたプラスの部分も同時に捨ててしまった。過度の政治主導はよく指摘される点である。それ以外にも、例えば憎まれ役を覚悟で言うが、自民党にはそれなりの秩序とルールがあり党内規律と長幼の序があった。しかし民主党は、若手に高学歴の立派な経歴の議員が多いせいか、合同総会での発言などを聞いていても、まるで節度を逸脱し無法状態になっている。そんなものは、古い時代の遺物だと言われるかも知れないが、しかし組織に規律をもたらすルールとモラルは有意義であるし、それを否定するならそれに代わる規範を確立しなければならない。

 派閥も、その弊害ばかりが指摘されたが、プラスの面もあった。党に組織面でも政策面でも秩序をもたらし、また何より個々の議員の面倒を見てくれる存在で資金の源泉でもあり、人事のよりどころでもあった。民主党でそういう類の組織がほとんど存在しないことが、離党者の発生に繋がっているようにさえ思われる。

 どういう対応が考えられるか。政党にはそれなりの党の序列とカルチャーがなければならない。その点、歴史のある自民党だけでなく、公明党や共産党でも議員の序列や独特のカラーが感じられる。浅い歴史の民主党は右から左まで種々雑多の構成でピンからキリまである。代表が一年ごとに幾度も交代したが、何かあれば、その度々、反対派が出て足を引っ張る。相手をいたわる情や温かみがなく情けない。派閥は難しい問題であるが、同じ政党で同志感を育成し、プロック組織を強化するなどもう少し知恵を出す必要があるだろう。

(2)マニフェストと基本政策
 2009年マニフェストが国民に大きな期待をもたらし、それが政権交代の原動力になったことは間違いない。一方で、実現可能性が十分でなかったために、国民に期待外れの印象を与え、不人気の原因にもなっている。更にマニフェスト遵守が党内の造反や離党の大義名分となり、野党がマニフェスト放棄を迫って、国民の民主党に対する信頼を損ねようしている。マニフェストは現在の民主党の最大の鬼門となっている。

 マニフェストは、「景気を回復し、減税して国民生活をゆたかにします」とか、「生きがいのもてる老後を作ります」など、従来の自民党の選挙公約のように、聞こえがよいだけで実現したかしないかはっきりしないような政策を、しかも総花的に掲げたり、野党はそれに対して財源の裏付けのないバラ色の公約や政策を掲げたりしていたことに対する反省から、数値目標、期限、財源を明記して実現状況がチェックできるようにしたものである。しかし、そのこと事態大変無理なところがあったことを反省しなければならない。

 元祖のイギリスでは、マニフェストで掲げた政策は、選挙で勝利して政権を獲得した場合には、実施する正統性を獲得するが、マニフェストに書いていないことは、してはならないわけではなく、新たに国民への十分な説明の義務が生ずると考えられている。そうでなければ、政治は刻々変化する事態に対応できないからである。従って目下わが国で、マニフェストを遵守したとか棄てたとかの議論が真剣に行われているのは、ある意味で問題だと思う。

 2009年マニフェストの特徴は、野党の作成したマニフェストが、政権のマニフェストになった初めてのケースだった。それだけに、甘い部分があったのは間違いない。無駄を削除しさえすれば財源が出てくるように言ったが、果たして16兆円の財源が出て来たのか。現実にはその無駄にぶら下がって生活している人も多い。無駄は削除しなければならないのは当然だが、簡単に削除できるかのように考えた点に甘さがあったことは否めないだろう。そのような部分は、次回のマニフェストに向けて釈明し正していかなければならない。しかし2009年マニフェストの意義、特にその理念を積極的に国民に説明していく必要があるのではないか。現在は逆に、「ばらまき4K」など、自民党の逆宣伝にうまく使われている。

 重要なことは2009年マニフェストの基本である。国民の生活の重視、税金の無駄遣い根絶、育児優先、コンクリートから人へ、中央集権から地域主権へなどで、これらは民主党の政策の根幹として生かされている。予算や具体的な政策は、自民党時代と比べて様変わりしつつある。「ばらまき4K」の悪口に負けずに、これらをもう少し丁寧に国民に説明しなければならない。

更に大切なことは、次の総選挙に向けてのマニフェストである。解散になってから、いきなりどこからかマニフェストが前回のように降ってくる事態はさけなければならない。過去のマニフェストを遵守するか否かの収拾のつかない議論を繰り返すより、2009年マニフェストの不十分さの自覚と反省の上に立って、今度は政権にある立場から、実現可能で、かつ民主党の基本理念に適ったマニフェストを作ることだ。そのために少数の政策マニアで素案をまとめ、その後全議員が参加して総選挙までに議論することが、現在の民主党にとって最も必要な作業である。

(3)日本の政治制度のしばり
 政権獲得後民主党が十分な成果を上げることができずにいる大きな理由は、参議院のねじれである。このために民主党の政策を自由に実現できる状況ではなくなっていることも事実である。このようなときに、「民主党の政策に従って参議院で修正」と言っても、非現実的なことは自覚しなければならない。

 ねじれは、自民党一党支配が失われた後は、今後どのような政権ができても生じうる。仮に今の野党が政権についても、ねじれに悩まされることになるから、今のうちに野党とねじれの場合の両院の意思調整の仕組みについて協議しておく必要があろう。

 日本の政治制度のしばりで今述べた 1)両院議員協議会の改革の他にも重要な政治課題として 2)行政機関法定主義の見直し 3)衆参両院選挙制度の抜本改革、など、日本政治の根幹にかかわる問題が放置されている。これらの案件は政権政党である民主党政権として問題意識をもって対処しなければならない。将来どの政党が政権をとっても直面する大きな障害であるが、小文では課題外であるのでここでは割愛する。

Ⅲ.どのように党を建て直すか
 これまで述べたことを基に、民主党をどう建て直すかを整理しよう。まず全議員が、民主党によって当選してきたが故に、民主党議員として責務を果たすことを確認する必要がある。特に現在我々は政権党の立場にある。かつての自民党政権下の利益誘導政治と違って、政権党のうま味は減っているが、それでも政権党であるからこそ有権者の期待に応えられる部分は大きい。そのことを自覚するとともに、一方で、特にねじれ下の政権党は、野党に譲らざるを得ない部分も大きいことを理解する必要がある。理想を言っていれば済む野党と違って、政権党は政策を実現する責務がある。そのためには、その代償として野党に譲らざるを得ない事態が生ずる。これを克服するのは、参議院選挙に勝つか、新たな連立で、衆参を通じた多数派になることだが、この点は目下の課題の範囲を超える。

 そのうえで、民主党の組織のあり方を再検討する必要がある。政策決定過程について見直しを行うことになっているが、個人的には自民党の総務会を参考にした仕組み、あるいは、民主党の常任幹事会にある程度の政策決定の権限を与えるなど考えられるのではないか。また知恵を出せば民主党的な政策決定のメカニズムを生み出すことも可能である。

 組織の再検討に当たっては、派閥、族議員、官僚依存などの自民党の組織原理が時代遅れになった自覚のもとに、新しい政党モデルを提示することになる。その場合に必要なことは、全議員の意識改革、党内秩序の確保、議論を盡くすにも限度があり、民主的プロセスを経て「決められない政治」からの脱却をはかり、同志としての歩み寄りの文化、年功序列など、新しい民主党のカルチャーを早急に生み出さねばならない。これらの点については、識者の知恵も借り、しかるべき機関で検討するのが良いのではないか。

 当面最も大切なことは、次回に向けてのマニフェストの準備である。2009年マニフェストの至らなかった部分は率直に認め、政権運営の経験を踏まえて、かつ民主党の基本理念に沿った現実的、具体的なマニフェストを早急に作成することである。

まとめ
 民主党に対して国民の厳しい目が向けられていることは間違いないが、自信喪失に陥る必要はない。今からでも遅くはない、次の勝利を信じて一致結束して頑張ろう。今日までの民主党は利益誘導型の自民党時代に代わる人間中心の政治への転換を目指して国民の支持を得てきた。
最近の世論調査をみても、自民党との支持率の差はあるが僅差であり、射程圏内であるといえる。これでは2005年の郵政解散選挙と2009年の政権交代選挙のような与野党の劇的な選挙結果はありえない。二大政党下での激戦接戦が予想される。私どもとしては民主党を蘇らせ、自民党の一党支配、利権政治の終焉後の安定的な政治システム構築する必要性を国民にしっかり理解してもらう必要がある。
現段階を新たなスタートラインとして全議員が一致結束、火の玉となって戦っていくならば、幾分の議席減は避けがたいとしても、小選挙区制でひっくり返せる選挙区は全国に散在している。総選挙で比較第一党の地位を確保さえすれば新連立構想による政権継続は決して不可能とは言えない。ネバー・ギブ・アップ!!前進あるのみである。